【完】1mの距離

 来ないでほしい時間程、早く来る。


 
 美佳が体育館倉庫へ向かう姿を、ただうつむきながら見送ることしかできなかった。


 「じゃあ、屋上行こっか。」


 「おう。」






 「はぁ~、気持ちいぃ~。」


 伸びをしながら朱莉が言う。


 「そーやなー。でも、それ最近毎日言ってへん?」


 「いいじゃん。ホントだし。しかも今、梅雨だから、ここ来れないときも多いじゃん。だから余計気持ちよく感じるんだよ。」


 「たしかに、それもそうだね。僕も屋上いいなって思うしね。」


 みんなが話しているのを、聞きながら考える。


 今頃、美佳はあの字の持ち主に告られているんだろうか。


 いつの間に俺はこんなにも、女々しくなってしまったのだろう。と思うほど、美佳のことになると考えてしまう。