毎日迎える、いつも通りの静かな朝。
ダイニングテーブルの向かいに座る母は、今日はやたらと静かだった。


「今週の土曜日、スケジュール開けておきなさいよ」

『え?』

「大切なお知り合いの方とのお食事」

『…わかった』


母の顔つきに、右手のフォークをまだ温かいスクランブルエッグのお皿に置いた。
今日の始まりは、朝一番から出だし不調だ。

ミルクティーを口に運んだところで、この気持ちも何もかも流されるはずはなかった。


「お嬢様。そろそろ登校のお時間ですよ」

『あ、はい』

家政婦の杏子さんの言葉に急いで朝食をかきこんだ。