礼side
卒業式前、
最後の下校。
あたしは陽のことを待つことにしていた。
今日は、車じゃなくて歩き。
最後くらい、一緒に歩いて帰ってみたかったから。
「礼、待った?」
「大丈夫だよ」
「よし、帰ろっか」
そう言って手を差し出してきた。
あたしはその手を自分の手に合わせ、
指を絡めて繋ぐ。
「初めてだね」
「そうだなぁー」
3月、まだ寒い季節。
日が少しずつ長くなってはきているものの、もう夕暮れ時だ。
「夕日、綺麗だな」
陽の顔に夕日が反射して
オレンジ色に輝く。
素敵だなー…
「どうした?」
視線を感じた陽はあたしに問う。
何も応えないあたしに
「何も言わないとキスするぞ」
と。
それでもあたしは返さない。
そんなあたしを路地裏の狭いところに
連れて行く。
そして、
チュッ…
キスを落とす。
「学生はこんなことしてんだろうな。
俺はハズいわ」
照れ隠しなのか頭をポリポリと掻く。
「ふふっ、おかしい」
あたしはそんな陽に笑いが込み上げてきた。
「なにが?」
「なんでもなーい」
あたしは背伸びをして唇を重ねた。
驚いた陽が更におかしかった。

