「空回りばっかりでいいじゃん」

「え?」


声がしたのは、ドアの方。


「礼?」

「ごめんなさい、タイミング掴めなくて入れなかった」


黒澤はテーブルに麦茶を置いた。


カラン……


氷が鳴る。



「空回りしなきゃ辿り着かない道だってあると思う。
まっすぐ行くだけじゃつまんないじゃない?
あたし達は不確実は世界に生きてる存在なんだよ?
神様じゃないんだから、全部見通して選べるわけじゃないんだから」


「黒澤……」


「だから間違うことだってある。
でも、それは更正すればいいこと。
また自分の未来に向かって、歩み出せばいいこと。
そう思わない?」


俺は頬を伝う雫を服の裾で拭き、

「そうだよな!!!」

清々しい気持ちで笑顔で言った。