「一生懸命っていうのは、
何か一つのことに身を注いでやり遂げることなんじゃないか?
それは、きっとささいなことで構わない。
自分にとって大切にしたいことを必死で掴み取って幸せになることの課程じゃないかな?」
「幸せになることの課程……」
俺はその言葉が心に残った。
「俺はね、礼を幸せにしたい。
だから、礼に一生懸命だよ。
大切にしたいのは礼の笑顔」
「じゃぁ、頑張るっていうのは?」
俺は頑張るって嫌いな言葉だ。
“頑張れ”
人から言われるとムッとくる。
こんなに頑張ってるのに、
なんでわかってくれないんだ。
だから、“頑張る”っていう言葉を聞いたりすると、敗北感を味わう。
「頑張るっていうのは、目標に向かうことなんじゃないか?
だから、自分は頑張っていても相手から見るとそうでもない。
それは、自分と相手の目標が違うから。
仕方ないと思う。
でもな、頑張る=目標を持つ
に繋がる気はしないか?」
佐伯の言葉がストンと入ってくるのは
なぜなのだろう。
「恭哉は、今まで適当にって言ってたけど本当にそうかな?
俺は違うと思うぞ。
適当にやってるやつっていうのは、逃げたくて逃げたくてもがいて死ぬ人のことを意味すると思ってるけど。
お前は、逃げずに戦ってきただろ?
それが、お前にとっての“一生懸命”であり、“頑張り”であったんじゃない?」
頬が濡れる。
目頭が熱くなった。
そんな気がした。
佐伯が理解してくれた。
俺のことを………。

