「なぁ、佐伯ってさ……」
「んー?」
ソファーで伸びている佐伯に、
俺が抱いていた質問をぶつける。
「なんで教師になったわけ?
それも国語科の」
そう、
べつに教師になんなくても佐伯組の頭をしていればいいじゃん。
俺はずっと思っていた。
ムクッと起き上がった。
「麗華と奏に勉強教えてたら、
教師になりたいって思った。
おまえは、ほんと……、奏に似てるよなー…」
「俺が?」
「あぁ。
お前と奏は頭が同じレベルだな。
だから、お前に教えていると奏に教えてたあの頃を思い出すなぁー」
目を細めて、
上を向きながら話す。
「国語科の教師になりたいって思ったのは、いつだかはわかんないけど…」
「けど?」
「人の気持ちを理解したり、
絡まってる気持ちを伝えたりしたい。
そう思っていたのは小さい頃からかなー」
小さい頃から…。
「人ってさ、偏見を持つとなかなかその人への見方が変わらないだろ?
それでありもしない噂とか、
レッテルやいじめ、
それを受けた被害者は奈落の底へ。
与えた人は楽しむ。
それは、ゲーム感覚らしい。
でもな、その2つ以外、
すなわち見てた人々は与えた人の噂を信じてしまう。
それは、なぜかわかるか?」
「………わかんねぇ」
「それは、“偏見”があり、
積み重なっていくことで“客観性”がなくなっていくんだ。
客観性を失うと、誤った情報が耳に入りやすくなる。
俺はその客観性を持ち続ける人になりたい。
そして、人々にそういう力を身に付けさせたい。
そう思ったんだろうな…」
なるほどなー。
客観性
か。

