クリスさんもびっくりしている。
「いいか、よく聞け。
言葉というのは難しいんだ。
言った自分は何とも思わないかもしれない。
すっきりするし、相手のことなんて知らないだろう。
でもな、言葉ほど残酷なものはないんだよ……」
陽は諭すように話し始めた。
「例えば、紙に“ばか”と書く。
それを相手にやる。
それはその言葉を字にすることで、相手に深く傷つけることが可能だ。
でも、口にして相手に“ばか”と言う。
それも真面目に…」
あたしは、笑いながら“ばか”と言っている人をよく見る。
たしかに紙は相手に確実に伝わる。
でも、口に出してそれも本気で言われたら………。

