写真を撮ろうとすると
彼女はいつも左手で顔を覆う。

それが彼女の表情。
ルックスも可愛いし
洋服やアクセサリーも流行のものをよく身につけて
ネイルやメイクにだって気を使ってるのに。

記憶の中で彼女の表情がいくらあっても
写真を並べると映っていない。

この5年間のアルバムを友人と眺めていた。
「ほんと、写真きらいなんだね」
「そうなんだよ、いつもこうなんだ」
「こんなに嫌がってるなら止めればいいのに」
「でも、せっかくだから残しておきたいじゃん」
「なんで」
「なんか不安になるんだ。思い出だけだと。
 本当にお互いに一緒に過ごした時間は存在したのかなって。
 お互いを好きでいたのかなって。
 だから、笑顔が映ってると安心するんだけどさ」
「安心していいと思うよ」
「え?」
「だって、写真に写ってる左手の指輪。
 5年前のプレゼントでしょ」
彼女の表情を覆う左手は、
いつも違うネイルなのに、色々な指輪がついているのに。
5年分の写真に、ちゃんと彼女の想いが映っている気がした。