野球なんて大嫌いだった。


大切なものを奪った野球なんて。



なのに、私が中学で出会ったのは、どうしようもないほど野球バカな奴だったんだ。







草の香り、風の気配、空の青さ。
全てが心地好くて。



土の匂い、ボールの汚れ、グラブの感触、バットの重さ。

絶えない歓声、転がり飛ぶ白球。



俺は、どれも、大嫌いになりたかった。