「いってきまーす!」
靴を履いて、鞄を持ったら。
いつも玄関に置いてあるキャンディーをひとつ舐める。
今日はストロベリー味。口の中に甘さが広がる。
あー…、キャンディー大好き。今日、新しい味買いに行こうかな。

私は桃原姫乃。高校生になったばっかり。
勉強、運動も平凡な成績だけど。ひとつ自慢がある。
それは、みんなよりちょっと可愛いということ。
ママはモデルだった。私はママそっくりに生まれてきて。
そこが、嬉しいトコ。

「姫乃ーっ!おはよー!」
「あ、亜由。おはよ」
亜由は私の親友。ボーイッシュで背が高くて、カッコいい。
「今日は何味?」
「ストロベリー」
「いちご好きだもんねー。まったく、幸せそうな顔して」
「幸せだもーん」
亜由は私のキャンディー好きなことを知っている。
誕生日プレゼントも、可愛くラッピングしたキャンディーの詰め合わせ。
「そういえばさ、何だっけ…。あ、江川が姫乃のこと好きだって」
「…江川くん?」
「隣のクラスの…」
「あ、B組の!地味にカッコいいよね!」
「『地味に』って可哀想だろ」
「でも、私好きな人いないんだ」
「なんで?いいじゃん、好きって思ってくれてる人がいるんでしょ?」

まぁ、そうなんだけどね。
私は誰でもいいってわけじゃないから。
自分から好きになりたい。
まだ初恋もしていないから。

待ってるの。


いい人が現れるのを。