本を開いてみせた。
そこには、先程までの出来事が書かれていた。

「おぃ。ここを見ろ。『彼女にはなにか不思議な力が宿ってしまったらしい。一体この力はなんなのだろう』だとよ。」
「てか、今も文字が増えてるじゃん。」

『黒の王子と彼女は共にこの力はなんなのだろうと…』

この本とことん気持ち悪い。
だいたいこの本がなければ私はこんなところに来なくてよかったのに。

「なぁ歌恋?」
「ん?」
「お前、帰り方が分かったら元の世界に帰るのか?」
「そりゃぁ…。」

ふと視線を本に落とす。

『王子は彼女のことを帰したくないようだ。彼女のことを好…』

私は慌てて本を閉じた。

「歌恋?」
「えっと。まだ考え途中かな?」
「でも、帰りたいだろ?」

出来ることなら帰りたい。
でもそれをルークにいったってどうにもならない。

「私は…。」
「そうだ歌恋!」

ルークは私の言葉を遮るように話の方向を変えた。

「明日。白の国の王子が来る。」
「白の国?」
「俺の兄だ。」
「兄弟で王子やってるの?すごいね。」
「いや…。この世界は今のところ黒の国の俺が治めている。だが俺ははっきり言って世界の奴に嫌われている。白の国の王が一番支持率が高いといっていいだろう。そこで俺の兄が、王権を渡せときっと言いに来るのだろう。」

ルークは冷たく言った。

「俺はあいつを殺さなければいけないのだろうか。」
「殺す?なんで。」
「俺は王権を返すのを断るつもりだ。そうしたらまた…戦争をすることになるだろう。」
「戦争…するの?」
「しないといけなくなる。俺はお前の意見を聞いてやり方を変えてもう一度いい世界作りをしようと思ったんだ。だから今…返すわけにはいかない。」
「私だったら…いや。ルークがこれは決めなきゃ。」
「俺…。そしたら戦っていいかな?」
「うん。やりたいことがあるんでしょ?守りたいものがあるんでしょ?そしたら誰も文句は言えないよ。」
「俺が今一番守りたいのは…か…。」

ルークは言いかけたまま、部屋を出た。

「おやすみ。」
「あ。うん。おやすみ。」

そっか。
戦うのか。
私でもそうするかな…。

守りたいもののため、無くすもの。
それは必然なのかな?

人々の平和の為、人々の命を失う。

こんな戦い…嫌だな。