「ほんとうに、おめでとうございます。」




「っ、ありがとう。今取り込んでるから、切るね。」




一方的に急き立てて通話終了ボタンを一つ押して。




彼女へ、届くだろうか。

本当に勝手なことだとは思っているけれど。


それでも、これぐらいの身勝手は許されるでしょう。





シャツに羽織りを重ねて、玄関を出れば雲の隙間から除いた陽光にさらされた。



庭石を一つ飛ばしで歩き、隣の家につながる通路へ。



彼女の家の鍵はいなくなった後、どうしようかと思ったが。


それでもいつでも帰ってこれるように、今もその家は引き払えずにいる。




今年も咲いた庭のスターチスの花は、白く、淡く揺らめく。



その花は、彼女に慈しまれていて、今年だってこんなに美しく咲き誇っているんだから。



戻ってきなよ。