冬になると寒がりの雫のためにコタツを用意した。

彼女の家にも用意すればいいものを、「あたし一人で当たると、なんか罪悪感が凄くて。」と訳の分からないことぶつぶつ言っていた。



「なつめさんの家のコタツって凄く、いいサイズだよね。
これくらいなら、やっぱりいいのかな…。」



なにがよくて、なにが悪いのかと尋ねれば、



「一人でコタツにあたってると、実家の家族はもっとぎゅうぎゅうで大変なことになってるのを思い出すの。それを思うと、一人でこんな悠々自適に暮らしていいのかな思っちゃうから、つい。」




なんとも、俺には理解しがたい。



「でも、なつめさんとふたりならぎりぎりセーフ。」





『それはそれは。』
一応相槌を打っておく。



「それより、私こんなにしょっちゅうお邪魔しちゃってるけど、仕事だいじょうぶですか?」




心配そうな顔で覗き込まれれば、この顔を俺が独り占めできる幸せをかみ締めずにはいられない。





『だいじょうぶだよ、雫さんがいても別に問題ないし。
それに、君がいたほうがいいんだ。』




「そうですかー、ならいいけれど…。」



まだ渋る顔だったが、それはあえて見なかったことにしよう。








―――…二人で過ごす冬は寒くも、温かかった。