まさか、さっきのおじさんが笑っていたのはこのことか。
多分、違うと思うけれど。
旺盛な探究心が聞かずにはいられなかった。
「あの、下のお名前は?」
『人に名前を聞くときは自分から名乗るのが筋じゃない?』
意地悪く聞き返され、それもそうかと思い至る。
「星川雫です。」
『雫さんね。俺は藤野なつめ。』
当たり。
当たってしまった。
「ご職業は?」
『物書き、自宅警備。』
私の大好きな作家さんがここにいます。と口を大にして叫びたい衝動に駆られる。
かろうじてそれを押さえ、沸点に達していた脳を強制冷却。
「私、藤野さんの本だいすきです。
あの、もしよかったら……、」
もし良かったら、どうすはいいのー。
「友達になってくだしゃい!」
…っ、変なことを口走ってしかも噛んだ。
舌噛んだ。