鈍い思考から切り替わるその感覚はあまり好きではない。
いつまでも、まどろみの中に居たいから。
瞳を開けて視界に入ったのは彼の顔だった。
その顔には幾筋もの涙の後。
やめてよ、そんな顔見たら、
さっきの夢だったように思えない。
彼は私を見ても、何もいわない。
だから、私も何も問わない。
私は半身を起こすと、背中に回された手に安堵する。
そして、彼は神妙な面持ちで私に向き合う。
「 、 。」
やはり彼の声は聞こえなかった。
ゆっくりと首を振る。
何もかも否定したかった。
―――なつめさん、私どうしたらいい。
そんな事聞いたって彼を困らせるだけだって分かっているのに。
あえて聞く私はやはりずるいんだと思う。