愛言葉





とりあえず両側試してみるが、どうにもこうにも缶に穴が開かない。




力が足りないのか。
そう思い至り、ありったけの力を込めるが、刃先が缶からずれてしまう。





「…なつめさん。」




仕方なく声をかけると、こちらを振り返り声だけで、『どうしたの』と心配される。




「缶、空かない。」




『どれどれ』
お玉を持っていた手を止めて、こちらにやってくる。




もう恥ずかしくて、まともに顔も見ることが出来ない。



『ああ、これ反対だよ。』
私が使っていた方の逆を使いながら器用に穴を開けてくれた。



『ここから、出来る?』
優しい声音で聞かれて、逆に悲しくなる。



「できます!」




『うん、手切らないようにね。』
私の頭をぽんぽん撫でて自分の作業に戻っていった。