『じゃあ、俺の位置づけは君の上司で良いかな?』
意地悪そうな顔をして、鼻先を私の鼻に近づけてくる。



顔を反らして、「一応。」とだけ答える。




『じゃあ、命令だ。名前を呼んで?』




語尾を疑問系にしてくるところが計算高い。



「…なつめさん。」



消え入るようなほど小さい声でそっとささやけば満足したように、また私の頭を撫で始めた。







『本当雫さんは可愛いから、このまま仕事に返したくなくなるよ。』



「そんな事言っても何もでませんよ。」
頬を膨らまして抗議すれば、苦笑された。



『そういうの全部俺のつぼなんです。』


頬に落ちてきた彼の唇に不意打ちを食らう。
彼の少し温かい温度が私にも伝わってくる程長い。






「…、じゃあ、私そろそろ戻ります。




………なつめさんもお仕事してくださいね。」





『雫さんに頼まれたらしない訳にはいかないだろう。』



「じゃあ、また後で。」



玄関でも名残惜しげに交わった唇に私は後ろ髪引かれる。