玄関を出て、帰途につく勢いで朝歩いた道を逆行する。
途中、“安い!おいしい!コロッケあります!”と書かれた看板に吸い込まれる。
職業柄、こういうものを見てしまうと、
「安いのが売りなのか、美味しいのが売りなのか。」
と首を傾けずにはいられない。
薄ピンクの割烹着を着たおばちゃんが出て来て、
『姉ちゃんー、このかぼちゃコロッケ今売れてんでー。』
と妙な方言でしゃべられて怖気づいた。
「あの、かぼちゃコロッケ二つください。」
こんなときでも彼を考えてしまう。
『180円になりますー。』
小銭を2枚渡して、おつりにまた2枚貰った。
がま口を開いて、ずいぶん小銭がたまってしまったと少々うなだれた。
『はいよー、姉ちゃん。早めにおたべー。』
「は、はいっ!」
袋を受け取るとまだかなり熱々の様子。
これは美味しそうだ。
これなら、食べる頃にはちょうどいい熱さだろう。

