身体を綺麗に洗い終え、ジュリアは野営地に戻った。
すると、バートン族の依頼板に人だかりができていた。
ほとんどの族民が集まっている。
ジュリアは一番後ろにいた、同い年のマーサに聞いた。
「マーサ、何かあったの?」
「ああ、ジュリア。依頼板、見てよ。すごい依頼が飛び込んできたよ」
マーサは手に持っていた弓で、依頼板の中心を指した。
そこには、ヴィルニ国からの依頼を示す黄色い紙。
ヴィルニ国からの依頼は珍しいことではない。
ジュリアは目を細め、その内容を読んだ。
「『ヴィルニ国より、バートン族へ。近々、王女であるエリーの結婚披露宴を行う予定である。よって、その護衛を依頼申し上げる』って…、エリー王女の結婚!? あの、わがままで有名なエリー王女が!?」
「それも驚きだけど、その下見てよ。ゲネ様のつけたランク。5だってよ?」
「5…って、最高ランクじゃん。よっぽどヤバい奴らに狙われたりしてるの、エリー王女は?」
マーサは苦笑した。
王女のわがままっぷりを思えば、恨んでいる人はたくさんいるに決まっている。
以前、『エリー王女に金を巻き上げられたから取り返してほしい』という依頼がきたことがある。
ゲネ様は「王女はそんなことしないだろう」と真に受けずに依頼を断ったが…。
もしそれが本当だったら…、よっぽどひどいお方なのではないだろうか。と、ジュリアは思った。
「でも、見てよ、報酬金。5000リギーだって。自分たちに入るのが半分だから、2500リギーだよ? これでしばらく働かなくて済むよ~」
「ちょっとマーサ。働かないのはダメだよ」
「嘘、冗談! でも、ゲネ様は誰に行かせるんだろうねー…。5ってことは、一人では行かせないってことよね?」
ジュリアとマーサは二人で唸った。
周りの族民たちも次第にざわつき始めた。
大して金に興味のない者でも、5000リギーとなれば話は別だ。



