彼は顔を洗い、息をつきながらこっちを見た。
目が合う。
―――途端、彼の顔はたちまち真っ赤になっていった。
「ジュ……ジュリア!!?」
「お疲れ、ロイル」
「おお、お疲れ…じゃねえよ! どうしたんだよ、その顔!?」
ジュリアは裸のため、ロイルは目を隠しながらそう聞いた(指の間から目は覗いてはいるが)。
「顔? …あ、まだ洗ってなかったか」
「ケガ、したのか? 一人で海賊撃退に向かったから! てかお前、のんびり身体洗ってる場合かよ!? アーバン国行くぞ、治療してもらわねえと――!!」
「あー、大丈夫大丈夫。みんなにも言われたけど、ただの返り血だから」
「嘘つくなジュリア!! お前はいつもそうやって強がってるの、俺知ってるんだからな」
「いや、だから、別に強がってないよ」
「いいからこっち来い! あ、服着ろよ服!」
ジュリアはため息をつき、残りを軽く洗った後、服を着ながらロイルの元に行った(その間もロイルは手で目隠ししつつ見ていた。ジュリアは気づいていながら何も言わない)。
ロイルは耳まで真っ赤になっていて、ジュリアは思わず笑ってしまった。
「いい?ロイル。私は別に、大けがしたわけじゃない。ほら、見て」
と、ジュリアはまだ洗いきれてない腕を見せる。
ロイルは目隠しを外し、食い入るようにジュリアの腕を見た。
…そして、深い傷がついていないことを確かめると、力が抜けたように座りこんだ。
「そんなに心配してくれたの?」
「当たり前だろ!! 俺はジュリアが――っ…た、大切なんだからよ」
「ふーん、ありがとう。でも、多少のケガ覚悟で依頼を受けてるんだし、ロイルもわかってるでしょ?」
「え…?あ、おう」
ジュリアはロイルに笑いかけると、再び川に腕をつけた。
「私、もう少しだけ洗っていくから。ロイルは先に帰ってて。ゲネ様に早く報告しないと」
ロイルは小さく返事をすると、武器の槍を担いでバートン族の野営地に帰って行った。



