「それで、アーバン国には行ったのかい? 早く治療しないと、傷口がひどくなるよ」
「大丈夫です。多少ケガはしましたけど、自分で手当てできるくらいですし。ほとんどが返り血ですよ」
あははと笑うジュリアに、ゲネは苦笑した。
「でも、早く手当てして服や身体を洗ってこないと…。びっくりして腰を抜かす奴も出てきてしまうからね。誰なのかは、わかるだろ?」
いたずらっ子のように笑うゲネに、ジュリアも笑った。
そして立ち上がると、身体を洗うために川に向かった。
その途中にも、依頼から帰ってくる民たちとすれ違う。
みんなジュリアの姿を見て目を丸くしたが、話をすると納得して笑った。
「でも、早く洗ってきなさいね。ロイルが見たら、アーバン国までおぶっていきそうだもの」
みんな口ぐちにそう言うため、ジュリアは自然と駆け足で川に向かう。
いつも洗濯物を洗ったり身体を洗ったりしている、バートン族の生活に役立っているバーリ川。
ヴィルニ国の先にあるアレージ山から流れる水である。
ジュリアは靴を脱ぎ、そして服も脱いで川に入る。
一仕事を終えた後の水浴びは、やっぱり気持ちがいい。
服もできる限り洗い、身体もこすって血を流す。
途中、傷口に触れて痛かったが。
脚を洗い、そして今度は腕を洗おうとした時、川沿いに誰かがきた。
……男だ。
ここはバートン族の領地であるため、他の者が許可なしに入れない場所である。
つまり、あの男はバートン族の者という事となる。
…遠くから見てもわかる、綺麗な長い青い髪。
何も混じってない、純色。
思い当たる人は、一人しかいない。
そしてそれは、今会ってはいけない人物。