静かなバートン族に、ひとつの足音が聞こえた。

ゲネはたき火から目を離し、そっと顔を上げた。


その先には、全身を真っ赤に染めてこちらに向かってくる人影。

頬を拭ったその手には、巨大な銃が握られていた。



近づくにつれて、顔がはっきりとしてくる。

大きな青い瞳の上に、真っ赤な髪の毛の少女。


彼女はじっと見据えるゲネのそばに立ち、そして銃を担いだ。


「おかえり、ジュリア。ひどいケガだね」


口を一の字に締めていた彼女は、「ジュリア」と名前を呼ばれると、すぐにふにゃりと口を開いた。



「…ひどいですよゲネ様ーー!! もうひどいのなんの! なんでよりによって、海賊撃退の依頼を私にさせたんですか!?」

「それは、この族で飛び道具を持ってる数少ない者だからね。その中でも、ジュリアが一番強いだろう?」

「あれは、飛び道具だろうがなんだろうが、関係ないですよ。仕舞いには、大砲まで持ち出したんですよ!? あれは、一人でやる依頼じゃなかったですって…」

「でも、やっつけたろう?」


にこにこと笑うゲネに、ジュリアは観念したかのようにため息を吐いた。

そしてたき火の近くに座る。



「船員やっつけて、船長をサルーン国に預けましたよ。報酬金も貰ってきました」


ジュリアは腰につけていたポーチから袋を取り出し、それをゲネに渡す。

ゲネは中身を見て、そしてその半分をジュリアに渡した。