咲耶くんの頭をわしゃわしゃ撫で、ククク、とら喉元で笑いを堪えながらそう言う大渕真。
咲耶くんはバッ、と振り向き、
「はあ!? じゃあ大渕さんには珈琲あげませんからっ」
と威嚇している。
その様子を見た大渕は、笑いながら「ちょ、うそうそ。エスプレッソちょーだい」と楽しそうだ。
すると咲耶くんはしょうがない、とでも言うように肩を竦める。
と、大量の缶やペットボトルが入ってある袋の中から一本、エスプレッソを渡した。
「今度奢ってくださいね」
「えー、じゃあココアでいいよねー」
「事務所横の喫茶店で」
何だかんだでこの二人は仲が良い。その分、口論は多いのだが。
“前行ったところは?” “…どこですか?” “ファミレスの近くの” “あー、じゃあそこで” “りょうかーい” そんな会話を聞き、思わずフフッと笑いを溢す。
個人的に大渕真はいけ好かないが、咲耶くんが懐いてるところを見ると、悪い人でもないのかと思う。
…思う、だけだが。
「梓先輩も行きますか? …あ、これミルクティーです」
ほんのり暖かいミルクティーを有り難く貰い、微笑む。やはり良くできた後輩だ。
また咲耶くんにも、ココアか抹茶ラテ、買ってきてあげよう。
「ありがとう、咲耶くん」
「いいえ」
