それにしても、こんな時間から電話なんぞしてきやがって常識知らずにも程がある。
…まぁ、それがこの男。
「ちゃんとオフィスついた? 変な人に絡まれたりしてない?」
立花弥生(タチバナ ヤヨイ)だ。
「…ちゃんとついた、とか。私は子どもか」
「俺にとっては子どもみたいなもの」
平然とそう言ってのけるそいつに、あーはいはいと相槌を打っておく。
機嫌を損ねれば何をしでかすか分かったもんじゃない。それこそ、無断でこの6階まで上ってきそうだ。
「はぁー、なんで同じ階じゃないんだろ」
「業務が違うからでしょ」
「営業やめようかな」
「そこまで?」
思わず苦笑を漏らすと、弥生は笑って“結構本気” と、返してくる。
「あっそ。とにかく私、オフィス戻るから切るね」
「気をつけて」
「どこまで過保護なのよ」
そう言い残して、通話を終了させた。本当、幼馴染みにしても甘すぎでしょ。あれ。
弥生とは中学の頃からの付き合いで、21歳になった今でも、職場は同じ。
ただ、フロアが一つ違いなだけ。エレベーターで下まで降りればすぐに会える。
(会いたい、とも特に思わないけど)
