わざとらしく鼻で笑ってやると、“…どっちの意味で?” と首を傾げる弥生。
…弥生の言いたいことがよく分からない。
が、聞いたところで私のメリットになるとは考えにくいし、スルースキルを身に付けるのも悪くはないだろう。
弥生の横をすり抜け、飲み物ゾーンへ。すぐさま紅茶の棚を見る。
おぉ、期間限定。
桃の実から果汁が滴り落ちるそのイラストは、私が好きな紅茶メーカーのもの。
レモンティーと迷ったが、“期間限定”という魔法の言葉に上手く乗せられ、結局ピーチティーにする。
ひんやりとしているそれを手に取り、歩き出そうとする横から「…ピーチティーって。どこの女子高生だよ」と呟く声がする。
いちごミルクに言われたくないわ。
そのままレジに向かうのも何か癪なので、とりあえず目についた足を踏んでおいた。
うずくまりながら悶える姿を視界の端に捉え、一人満足げにレジへと歩みを進める私。
ヒールってすごいと思う。
少しの優越感に浸りながら、財布から小銭を出す。
店員さんから、お釣りになりまーす、とレシートと硬貨2枚を受け取り、足早にそこを出た。
時間にまだ余裕はあるが、奴の仕返しに付き合っている気力の余裕はないから。
ヒールで走るのはいくら何でも無理があるので、早歩き程度に先を急ぐ。オフィスでゆっくり食べればいいや。うん。
そんな私の小さい決意も虚しく。結局後ろから追ってきた弥生に腕を掴まれたのは言うまでもないだろう。
「お昼、向こうのテラスででもどう?」
気味の悪いほど爽やか笑顔の弥生が、悪魔に見えたのは気のせいだと信じたい。
