「おはようございます」
いつものように挨拶し、自分のデスクへと向かう朝の8時過ぎ。
コツコツと小気味いいヒールの音に気分を良くしながらも、顔はしっかり引き締め今日も出社する。
「おぉ、桐野くん。昨日は遅くまで、ご苦労だったな」
「いえいえ、平気ですよ」
「今日からもよろしく頼むよ」
「はい」
ぺこり、とお辞儀すると、主任は笑って頷く。
それを、“もういい”の合図と察し、失礼します、ともう一度頭を下げ、今度こそ自分のデスクへ。
小さめのバッグをそこに置き、キャスター付きのイスに座る。
と、タイミング良くケータイが振動した。
誰だろう、…大方予想はついているが。
止まらないバイブ音が、電話だということを暗に示す。
ったく。職務中だってことを忘れてんじゃないだろうか、あの馬鹿は。
仕方ないので主任に断りを入れ、小走りで廊下へと出る。
今だ震え続けるケータイにうざったさを覚えつつ、ため息を吐いて通話の文字をタップした。
「もしもし」
「やっと出た」
ふわふわと浮くような声。安堵のような溜め息も一緒に聞こえたので、不愉快さに眉を顰める。
私は何歳児だ。
