―――― タイムリミット ――――
奏太(そうた) 麗(れい)
この空気、すごくイヤ。
ドキドキしすぎて、ガクガク震えちゃう。
心臓が口から飛び出しちゃいそう。
過呼吸で、倒れちゃうよ。
「そんで? どしたの?」
両手をポッケに入れて、目の前に立ち奏ちゃんが私の顔を覗き込む。
うわぁーっ。
そんな近くに顔が来ちゃったら、本当に心臓が飛び出しちゃうよ。
だって、私。
この空気にやられて、言葉がなんにも出てこないんだもん。
さっきまでは、「よしっ」て気合入れてて、奏ちゃんを校舎裏に呼び出したまではよかったんだけど。
いざ、本人目の前にしたら言葉が全然出てこない。
あの気合はなんだったの?
自分で自分に言っちゃうくらい。
だけど、何一つ声にならないんだ。
たった一言だけなのに、緊張しすぎてもう、ダメ。
全然、ダメ。
喉の途中に、なんか邪魔するものがあるの。
おっきな塊がつっかえてて、伝えたい言葉が出てきてくれないの。
なのに、想いの塊はどんどん大きくなっていく一方で。
だから、余計に、益々、口から出てきてくれない。
そうやって、時間だけがどんどん過ぎていく。