―――― 見つめる先 ―――― 哲也 (てつや) 有希 (ゆき) 放課後。 野球部のグラウンドを見渡せる、金網の側は私の指定席だ。 アミアミに手をかけて、エースの哲ちゃんをひとしきり眺めてから帰るのが私の日課になっている。 哲ちゃんは、すごいんだ。 エースで四番。 哲ちゃんは、かっこいいんだ。 あの、笑顔と統率力。 見てるだけで、私は幸せな気持ちになれるんだ。 そんな哲ちゃんを、私は今日も金網越しに眺めている。