綺麗な茶髪の、ゆるくパーマがかかった髪を後ろでひとまとめにした女の人が雑誌を取り上げた。

「ああっ、それ、お、俺のじゃなくてこいつの、佐々木くんのです!!」

「嘘おっしゃい。エロガキが持つもんでしょ、普通!」

 にやにやとその女性は雑誌を読む。

「あら、これ…なかなか面白いじゃない!」

 そのまま、漫画を読み続ける。時々笑い声をあげるその姿に、僕たちはただ唖然としていた。

「あっはははははぁ…ふぅ、うふふ、これなかなか面白いじゃない!?」

「ファッ!?…で、ですよねー…」

 エロ吉はいつものようすではなく、ビビっていた。

「あのー…この雑誌…僕のなんですよ…」

 そういうと彼女はキョトンとして、猫のような大きな目をさらに大きく、真ん丸とさせて僕とエロ吉を交互に見比べた。彼女はてっきりとエロ吉のだと思っていたようだった。彼女は僕の方を見て、にこりと微笑んだ。

「あらら、てっきりエロ吉くんのだと…ごめんなさいね。これからはもう雑誌なんて持ってきちゃダメよ!でも、今回は面白い漫画を読ませていただいたから許すわ♪」

 ひとまずホッとした。2年生にもなって、こんな些細なことで怒られるなんてごめんだ。

「私、始業式の準備だから!またね!」
 
彼女は雑誌を小脇に抱えて教室の出口に向かった。

「あ、あのー…僕の雑誌、返してくれませんか…?」

教室を出る前に、彼女はくるりと振り返って言った。

「この雑誌はもらってくわ!教師の立場からして没収は当然でしょう?」

 そう言って教室から消えた。

「あんまりだよなぁ、アイツ…」

 エロ吉がげんなりして一言呟いた。

「ああ…」

 そういって、頷くことしかできなかった。