「小山に学校来てほしくない人―!」
誰かが手を挙げながらそう言うと、みんなも手を上げ始めた。
「はーい」
「やだやだー!」
次々に手が挙がり、ついにはクラス全員が手を挙げた。
「ほら、帰れよ!」
私のランドセルに落書きをしていた男子が私を突き飛ばして教室から追い出そうとしてきた。
「かーえーれ!かーえーれ!かーえーれ!」
一斉にコールがかかり、私はたまらず教室を飛び出した。
どこに行けばいいのだろうか。
マンションに戻ってもきっと鍵がかかっているだろう。
たとえ美和子さんがまだ家にいたとしても入れてくれない。
行くあてもなく近くの公園で時間をつぶすことにした。
公園へ向かって歩いていると周りの人たちが私を見てきた。
こんな時間に小学生が街を歩いていれば怪しむのは当然だ。
ランドセルじゃ目立っちゃう。
そう思ってランドセルを下ろそうとしてふと思い出して鞄を見た。
「こ、こんな、酷い」
ランドセルの背には黒のペンで殺人鬼の娘と書かれていた。
慌ててそれを見えないように抱えて公園へと走って向かった。
