私が驚いて動きを止めていると、腕をグイっと引っ張られた。

「だからさっさと荷物まとめなさい」

「なんで…」

私が納得できずにいると、女の人は諦めたように事情を説明してくれた。

「あんたの父親がとんでもないことしてくれた。こっちにも大分火の粉が来ると思う。あんたは尚更ね」

「と、とんでもないことって…?」

私が聞き返しても、そこに関しては答えてくれなかった。

「直に分かることよ。それより、あんたをこのままこの家に置いておくことはいかなくなるの。だから私の家に連れていく。私だって嫌だけどね」

「なんで?私はここにいちゃいけないんですか」

「別にいたっていいわよ。このままあんたをここに置いておいたら私達が世間様から白い目で見られることになるのよ。もういいでしょ!さっさとしてよ」

女の人は苛々してまた歩き出した。
私は諦めて自分の部屋へ案内した。

女の人は早速私の荷物を出し始めた。

「今日はとりあえず持ち出せるものだけ持って行くわよ。明日も普通に学校に行ってもらうから学校の道具はあんた持ちなさい」

「あの、私…どうなるんですか」

「あたしが知るか」

「そんな…。あの、名前、まだ名前聞いてないです」

私の言葉に女の人は面倒くさそうに溜息をついた。

「美和子よ。山本美和子」

全く知らない名前だった。