「ゆーなぎちゃん?どーかしたんですか?」

「ひゃっ。か、かよちゃんかぁ。なんで?」

「村岡君の方を見て、ぼーっとしてたから。どーかしたの?」

「べ、別にっ。なんでもないよ。」

「そう?」

かよちゃんは、そう言うと

にこにこした顔で、あたしの耳元に口を寄せた。

「もしかして…。付き合い始めた、とか?」

「ほ、ほぇっ!?」

「ふふ、やっぱり。ゆーなぎちゃんは、わかりやすいから。」

かよちゃんは、おめでと、とだけ言って

あたしの前の席に座った。

「ん…。谷村…?どーかしたか?」

「わっ。けーごっ。起こしちゃった?」

「別に、もー授業始まるし。」

「そ、そか。」

あたしの隣で、ゆっくり伏せていた身体を起こして

伸びをする、京吾。

あたしが、京吾の彼女になったなんて

まだ実は、実感なくて。

なれなくて、ちょっとだけ鼓動がはやくなった。