あたしは無意識にも、自分の唇に指で触れた。

びっくりしすぎて、身体がうまく動かない。

なんでかは、わからないけど

かすかに手か震えているのがわかった。

「…どーしよ…。」

してみたくない、わけじゃない。

むしろ、恋人同士になったのだから

いつかはそんなこともするんじゃないか、と

心の中では、思ってたのかもしれない。

なのに。

なんでだろ?

こんなにも動揺してる。

『けーごがいいなら、してもいーよ。』

悩んで悩んで、考えたあげく

あたしは返信を返した。

『そっか。』

『ん。あ、あのさ。…あたし初めてだからね?』

『んなの知ってる。怖いならやめてもいーんだぞ。』

『けーごだから、へーき。』

自分にも言いきかせるように

iPhoneの画面を見つめた。

『おう。んじゃ、また明日な。』

『うん。明日ね。』

ポチ、とボタンを押して

あたしはベッドに倒れこんだ。

「あーもう。明日、どんな顔して会えばいーのよ。」

火照った頬を、両手ではさんで

あたしは目を閉じた。