家に着いて私が電気をつけると、
彼はフラフラしながら自室に向かった

私は急いで、彼の後を追った

彼は充電が無くなってくると、
五感が全て衰えてくる

だから私はあまり、
彼を一人にしたくない

できるだけ、私の近くに
いてもらうようにしている

その方が、安全だから


彼をベッドの上に寝かし、
ヘッドギアを被せた

彼の身体は、これによって力を取り込む

どういう仕組みになっているのか、
博士は詳しく教えてはくれなかった

「ゆっくり休んでね」

私がそう言って彼の部屋の電気を消すと
彼はほんの僅かな力で笑った

だから私も笑い返した


ープルルルルル…

ダイニングに置いてある電話が鳴った

時計を見ると、
もう夜中の2時を回っていた

「もしもし」

私は少し不審に思いながらも
受話器を手に取った

『イクミ、俺だ』

その声を聞いて私は、
安堵の気持ちと共に溜め息がもれた

「なんですか」

『ひどいなあ、今日は良い知らせだぞ』

「もしかして、ケイの?」

私はつい、声のトーンを上げた

すると電話の向こうの博士は、
声を上げて笑った

『本当に嬉しそうな声だ。
ケイとの暮らしは上手くやってるのか』

「はい、おかげさまで」

『それは良かった。実はな、
ケイの体力のレベルアップに成功した』

「つまり、
長い間活動できるということですか?」

『ああ』

私はそのことが嬉しくて、
思わず一人で満面の笑みを浮かべた

嬉しいよ、ケイ。

『それでだな、明日の午後6時に
ケイを連れて研究室に来てほしい』

私は肩と顔の間に受話器を挟んで
急いで紙に鉛筆でメモをした

「ありがとうございます」

お礼を言って、私は電話を切った


私は色々なことを想像した

例えば、ケイと一緒に旅行に行く

できれば星が綺麗なところが良い

それに、空気が綺麗なところ

ケイと一緒に散歩をする

ああ、これではいつもと変わらないな

ケイは笑うだろうか

きっと笑うだろう

そしたら私も笑うんだ

それが私にとっての一番の幸せだ