大学に入れば勉強漬けの毎日になることはわかっている。
そして、シュアもそれを望んでいる。
一流の医者になることは子供の頃からの夢だから。
大学で出来ることは全てやる。
その為には努力を惜しまないし、必用なら大切で大切で甘やかしてきたレーヴを少しだけ自分の側から離しても構わない。
その気持ちをレーヴもわかっている。
レーヴもシュアは大切で、シュアの邪魔だけはしたくないから。
「寮生活、頑張ってね」
ふいに言われたのはそんな言葉。
お互いに近くにいれば頼ってしまうのがわかっていたから。
あえて、物理的な距離を置くことにした。
明日からは空いている部屋に特別に入れてもらえる。
明日からはおはようも言えない。
当然のことが当然でなくなるのはとても怖くて。
だから、当然だけど当然じゃないことをしてみたくなったのかも知れない。
……ああ、違うのかも。
ただ単純にシュアのことを心配して真摯な顔で言ってきた、この女の子が好きだからかも知れない。
「レーヴ」
「なに?」
レーヴの手をとって、緊張を必死に隠して。
その言葉を告げた。
「好きです」
唐突なその言葉にレーヴの青空色の瞳が、いつも眠そうにしている瞳が、大きく見開かれた。
「……ずっと好きだった。ずっと言いたかった。待たせてごめん。
レーヴ、レーヴ・ミッシングトン。
僕は、君が好きだよ」
繋がれている手に口づけを。
やり過ぎかもしれないけれど、顔を真っ赤にしているレーヴが可愛かったから。
「シ……シュア」
「ん?」
「えっと……その。あのね!」
「うん」
「……私も、好きです。
ずっとずっと好きで、でも、このままでいいかなって思ってて、だから、……」
ちょっと困ったように視線を迷わせてから最後にシュアを真っ直ぐに見て。
ふわりとシュアを抱き締めた。
「このままでいいと思ってた。
でも、だから、……嬉しい」
シュアは呆けたあとにレーヴを抱き締める。
寒い夜なのに何故かあまり寒く無くて。
お互いに恥ずかしいので手を外すことが出来なくてどうしようか迷うのは、少し後の話。
誰もが今さらっ!!、と思うようなことだが二人が付き合うことになった日のお話。
――二人の曲がり角。