「それで?あなた卒業したらどうするの?」
「聞かなくてもわかるでしょう?」
「それもそうね」
「……」
「……」
「卒業、か」
「卒業だよ」
「実感ある?」
「ない」
「私もない」
二人は顔を見合わせてくすっと笑った。
「でも明日は卒業式!」
「私たちは卒業する」
「だから、帰ってきたのね?」
「最後にね」
「やっぱり、あの人のところに行くの?」
「もちろん。それが私の道。もう子供じゃあないし、自分のことも月様のことも一人でできる。できるようになった」
「……エイラン・イーリアには、戻ることはないのかしら」
「だって、私はイリアだから」
「そう」
月明かりで照らされる二人の顔は瓜二つ。
髪の長さだけが違った。
二人は月を眺めて、夜明けを待った。
姉妹として過ごす最後の夜。
――二人の曲がり角。