どのくらい時間が経ったのか。





何時間も経ってるような気がするけど。





まだ少し涙が出るけど、だいぶましになってきたと思う。






いつまでも泣いてたって仕方ないじゃんか。




まだ平気。




まだ自分の気持ちを受け入れる前だったし。




今ならすぐに忘れる、忘れられる。




薫子に好きって言っちゃった手前なんか負けたみたいで嫌だけど。




仕方ない。




聖は薫子が好きなんだから。




アタシは…好きじゃ、ない、から。






………。









ふぅ。






これ以上考えるのはやめよう。




無駄、だから。







落ち着いてきた心をさらに落ち着かせようと大げさに深呼吸した。








前を向かなきゃ。




立ち直りが早いのがアタシの唯一の取り柄なんだから!





うん。






なにはともあれ、とりあえず、顔を洗おう。






涙でぐちゃぐちゃなこんな顔じゃ誰かに会っちゃったら恥ずかしいし。




ふぅー。





またもう一度深呼吸してずっと俯いていた顔を上げた。







…トイレ…。




……………。







あり?






ありり?






さて問題です!




ここは何処でしょう?




ん〜。


あはは〜…




迷子になっちゃった!







俯いて適当に走ったから現在地がわかりません。






だ、だいじょうぶっ!


ここは家のなかだし!


歩いてれば戻れるよ!


うんっ。




まずはトイレを探そう。






同じ色、形をしたドアが果てしなく続く廊下。

左右を見比べて壁が近いと思われる左へ歩きだした。