「あ――――!!汚いぞ!」
後ろで麻紀が叫ぶ声をシカトしてシュート。

パサッ

「……ん〜、良い音。」

アタシの一番好きな瞬間。
ボールが綺麗な弧を描いてリングに吸い込まれる。
ネットをサッと通り抜ける、この瞬間だけは周りの声を一切遮断して音に聞き入ってしまう。

久しぶりの感覚に浸ってたら、麻紀に優しくこつかれた。

麻紀の顔を見ると、アタシを見て微笑んでいた。
アタシの気持ちをわかってくれる。
アタシの全てを理解してくれる。


「ほら。」

麻紀がボールを付き始める。
アタシは部活を思い出してちょっと本気になって。
麻紀も結構真剣な顔に。

相手の動きを読もうと考える。



二人とも集中していて周りの視線に全く気付かなかった。
大注目を浴びているのに。






「あ〜〜、やっぱり桃には勝てへん!悔やじぃ〜!!もう一回!」

「へへん。麻紀さん、顔洗って出直してきなはれ」

勝負は桃香のストレート勝ち。

「はぁ?あんま調子乗んなや!!」

「あはっ☆まぁまぁまぁ、そんな怒らないで。」

「‥‥‥」


キーンコーンカーンコーン♪♪



麻紀が若干不機嫌ななか、ナイスタイミングでチャイムが鳴る。


「あ♪たっちゃんだ!」


チャイムと同時に入ってきた人物を麻紀が瞬時に見つけて声を上げた。

男勝りな麻紀の声だとは思えないくらいの猫なで声で。

さっきの表情は綺麗な笑顔に変わっていた。

「相変わらずわかりやすいなぁ。」

「(ニコ)」

麻紀はアタシに満面の笑みを向けてから、その人物目がけて突進していった。


桃香はその光景を呆れながらも楽しそうに見て。

彼に視線を向ける。



背が大きくて、短髪、黒髪。
顔は良く見えないが、抱きついた麻紀を優しく受け止めて、笑顔になっているのがわかった。