「チカぁ今日カラオケ行く?」
『うん、行く』
夏村君に向けられていた私の視線はミオナの声で離れた。
「じゃぁリホが予約しておくねっ」
「さんきゅ~」
もう一度夏村に視線を向ける。

あ、
夏村君と数秒目があった。
すぐぱっと目をそらす。
・・・私も夏村君は少し苦手かもしれない。




『ホントにごめん!先行ってていいよ!』
放課後になって思い出した。委員会の仕事があったことを。
玄関の前で3人に頭を下げる。
「だいじょぶ!ガンバレー」「じゃお先に」
3人は手を振って学校を出た。
少し崩れたポニーテールを直す様に髪を束ね直して
よし教室に戻ろ、と振り返ったとき。

「危ね」『わっ!?』
ぺしっと髪の毛が何かにあたった。
「痛ぇ・・・髪の毛凶器・・・」
顔を押さえてそう言うのは
『うわ、夏村・・・君・・・』
「うわって何、謝らないの?」『あ、ゴメン』「・・・別に怒ってないけど」
ならなんで謝らせたのこいつは!?
だから夏村君は苦手。

「あ、やべちょっとどいてくれる?遅刻するとレナ五月蠅いから」
『れ、れな?』
下駄箱から出した靴を投げてかかとを踏んだまま走っていった。
大きなため息をついて教室に戻ろうと思い直した。
パキ。
右足で何かを踏んでしまった。
『あー、割れちゃった・・・』