私も人参の皮を剥いた。


  だけど、前に剥いたときよりは表面がでこぼこで上手くいかなかった。


  何本やっても変わらなかった。

  
  それでも頭の中は人参より愛ちゃんの事だった。

  
  「あの…藤堂さん、愛ちゃんの様子あれから見に行ったのですか?」


  私は手を止めて藤堂さんをみた。


  藤堂さんも作業を止めてこちらをみた。


  「昼食の時に呼びに行ったんですけど…やっぱり遠慮されちゃいました。」 


  残念と少し顔がしょんぼりしていた。


  窓から入ってくる夕日の光がその顔を照らした。

 
  「藤堂さんのご飯を食べないだなんて勿体ないですね」


  「本当にそうですね」


  藤堂さんは手を口元に持っていってクスクスと笑っていた。


  愛ちゃん…


  本当に大丈夫でしょうか?…


  昨晩から何も食べていないし…