翼からの突然の質問。

「は?!何!?急に!」


あたしはいれてくれたホットコーヒーを吹き出しそうになった。


「だから、恋人いんの?って」


「…いないよ、いたら娼婦なんかなってないよ」

「だよな」

「…翼は?」


いるはずないと思ったけど
一応、きいた。


「………いるよ」


「え「うっそだよ〜ん♪」


「は?」


「いたら俺もこんな仕事してねぇって」


翼はあたしに哀しげな笑顔でタバコに火を付けた。

タバコを持った左手の薬指にプラチナのシンプルな指輪がはめてあった。

「それって…」


「あ?これ?飾りだよ。カモフラージュ。ほら、客とかってさ、マジになって、付き合ってとか言ってくる奴いるだろ?面倒くさいからつけてんの」


「そうなんだ」


言いわけとしか、あたしには聞こえなかった。




思い返せば、いつでも翼は左手の薬指を愛しそうにみつめていたから。