あの日、あの夜、プールサイドで



今まで我慢していた何かを吐き出すように泣き出す寧々と、怒り狂う俺。


許さない!!
寧々を見捨てた母親を絶対に許さない!!



そんな俺たちを交互に見ると


「寧々ちゃん、今日はと明日は光太郎の部屋に泊まりなさいね。」


「うわぁーん!」


「ママが明日お迎えにきても、私も光太郎もあなたを渡す気はありません。
大丈夫。私と光太郎が絶対にあなたを守ってみせますからね。」



寧々を落ち着かせるように、柔らかに、静枝さんは寧々の背中を優しく撫でる。


そして俺に視線を戻すと


「光太郎。
少し寧々ちゃんと二人きりにしてちょうだい。」


「……え?」


「落ち着いたらあなたのお部屋に送っていきますから。」


静枝さんは静かな声で、諭すようにそう言った。




本音を言えばそこから出ていきたくなんてない。寧々にずっと付き添っていたい。


だけど……
どうやったって冷静でいられない俺は、寧々の些細な一言で爆発してしまう可能性がある自分。


そんな俺を見たら、また寧々は混乱して泣き出してしまうだろう。



そう思った俺は


「……わかった。」


それだけを口にして、園長室を後にした。