あの日、あの夜、プールサイドで



「夜だけ……家に来てる。」


なっ……!!!



その言葉に絶句したのは俺だけじゃない。静枝さんまでもが、目を丸くして言葉を失う。




「パパ、いつも言うの。
お前が愛児園のヤツに告げ口したから、俺が辛い思いしてる、って。ママも困ってる、って……。」



「…………。」



「ね、寧々が悪い子だから。
寧々が悪い子だから叩くんだ、って。いい子になるために叩くんだ、って……パパが……。」




そこまで言って
俺は我慢できずに




「ふざけんな!!
そんなのしつけじゃねーよ!!虐待じゃないか!!」




声を荒げて寧々に叫ぶ。




「静枝さん、ここまで聞けば十分だろ?!
俺はもう我慢できない!
寧々は絶対に返さない!!」





手のひらに爪が食い込んでしまいそうなほど、強く強く手のひらを握りしめる。


怒りで体が震える。
自分の無力さに頭に来る。


やっぱりあの母親に寧々を返すべきじゃなかった。


あの時、誰に何言われてもこの手で守って、返さなければ、寧々はこんな目に合わなくても済んだのに!!