あの日、あの夜、プールサイドで



「先生……」


「だから自分を悪い子だなんて言っちゃダメ。あなたはとても優しくて明るくて思いやりのあるいい子なのに……どうして自分のことを悪い子だなんて言うの??」




静枝さんがゆっくりと話し出す。
寧々の体を抱きしめながらゆっくりと。


静江さんの持つ
温かで柔らかな空気にほっとしたのか


「だ、だってパパがいつもそう言うから……」


寧々はやっと重い口を開く。




パパ……?




思いがけず出てきたキーワードに驚いて


「な、なんだよ、それ!!」


声を荒げると寧々は怯えたようにビクンと体を揺らす。




――あ……




そんな寧々を見て
静枝さんは俺に制止の視線を向ける。



『今は見守っていなさい。』



そう言っているかのように。





抱きしめたまましばらく経つと


「寧々ちゃんのおうちにはパパがいるの??」


静枝さんは再び寧々に語り始める。




すると、寧々は少し悩んだあとコクンと小さく頷いた。