あの日、あの夜、プールサイドで



俺は真彩を壊れるくらい強く強く抱きしめた。


抱きしめた真彩からは優しくて甘い彼女の匂いがする。鼻先をくすぐる彼女の匂いを感じながら


「好き、なんだ。真彩。」

「…え…。」

「俺は君が好きなんだ。
俺はね?好きすぎてどうしていいのかわからないくらい、君が好きだよ。」


俺は驚くほど素直に、自分の気持ちを吐露できた。



真彩がキラの彼女だとか
高校生だとか
8歳も年下だとか
もうそんなのどうだって良かった。



自分を普通じゃない、と言い
普通じゃない自分を卑下する彼女を見て、我慢できなかった。



そうじゃない。
君は愛されるために生まれて来たんだ、と。

そこに存在してくれるだけで愛おしい、かけがえのない存在なんだと伝えたかった。




俺は少しだけ体を離して、真彩を見つめる。その瞳には困惑の色が映っていて、ただ呆然としながら俺を見ている。


ーーあぁ、だめだ。

俺はどうしようもなく、彼女に惚れてる。




一度だけでいい。
この陶器のような、肌に触れたい。
桜色した唇に触りたい。




ーー彼女が欲しい

素直にそう思った。





自分の欲望を止められなかった俺は彼女の頬に手を当てて


「…好きだよ、真彩。」


そう囁いて彼女の唇に触れるだけのキスをした。



柔らかで、温かい真彩の唇。
拒絶されるのはわかってた。


真彩はキラの彼女。
優しく義理堅い彼女はキラを決して裏切らない。


真彩が惚れてるのはキラであって、俺じゃない。



そんなことわかっていたはずなのに…俺は角度を変えて何度も何度も真彩の唇をついばむ。


これで最後だからと言い聞かせて、彼女を忘れてしまわないように、何度も何度も触れるだけのキスをした。