あの日、あの夜、プールサイドで



「迷惑だなんて…思ってないよ。」


さっきまでの決意とは裏腹に、自分の口からこぼれ出した言葉はこんな言葉だった。


「まぁ…正直ビックリはしたけどさ?自分を心配してくれてる人に、迷惑だなんて思うはずない。」


「先生…。」


「ありがとう、真彩。
来てくれて、嬉しいよ。」



素直な感謝。
それくらいは伝えてもいいだろ?


誘惑するわけじゃない。
好意に好意で答えるくらい、ちっとも悪いことじゃないよな?


自分で自分をごまかしながら


「じゃ、行くか。」


俺は真彩を誘ってチャリンコを押しはじめる。




真彩はホッとした顔をして俺の横をテクテク歩く。



「良かった。帰されたらどうしようかと思った。」


とか


「怒られるかと思った。」


とか真彩はポツポツ話していたけれど、そんな真彩を心底可愛いと思った。



俺のために来てくれた。



それだけで良かった。




ズルイよな?
俺は嬉しかったんだ。


キラよりも自分を選んでくれたことが何よりも嬉しかった。



この瞬間だけは真彩はキラのものじゃなく、俺の俺だけの真彩。目の前にいる真彩は俺だけのものなんだ。


そう思えただけで、嬉しかった。



忘れる努力をしようと決めたのは自分なのに、彼女に会ってしまったらそんなことは到底無理なのだと思い知る。


欲しい。
彼女が欲しい。


言ってしまいたい。
君が好きだ、とーー……。