あの日、あの夜、プールサイドで



愛児園を出た?
迎えに来い??
一体何を言ってるんだ、この子は。


「ダメだ、真彩。こんな時間に女の子が外にいちゃいけない。」


愛児園の近くは本当に田舎で街灯も少なく真っ暗闇だし、うっそうとした雑木林まである。駅までそんな夜道を女の子一人が歩くだなんて、危なすぎる!


「こんな時間に出歩いて何かあったらどうするんだ。俺は大丈夫だから引き返せ。」


電話の向こうの真彩に強い口調でそう言うと


「あ…一人じゃないから大丈夫です。」

「え?」

「ジュンくんが駅まで送って行ってくれるって言ってくれてるから、大丈夫ですよ?」



真彩は相変わらずのほほんとした声でこんなことを言い始める。


「でも…!!」


さっきまでの決意を胸に、真彩の誘いを退けようと声を上げると



「こんな日に1人でいちゃいけないんです。先生が何と言おうと私は行きますから、30分後に◻︎△駅まで来てくださいね。」


真彩は相変わらず柔らかな声でそれだけを告げると突然ピッと電話を切った。




ーーおいおい。

意外と強引だな…。




初めて見せた真彩の押しの強さに驚いた。


いつもキラの言いなりになって我慢ばっかりしてるのに…俺には強気だなんて面白すぎる。


これ以上話しても平行線だと思ったから強引に切って、自分を押し通したんだろう。


初めて見せた真彩の顔。
初めて俺に見せたワガママがたまらなく愛おしかった。


きっとキラも知らない、強い真彩を見れた事が何より俺の優越感を刺激させた。