あの日、あの夜、プールサイドで



その瞬間訪れた、長い沈黙。



なーに言ってんだ、俺。こんな重いセリフ、子どもに言う言葉じゃねーだろ…。


ふと我に返ると恥ずかしくなってきて、携帯を持ってる手と反対の手でボリボリ頭をかきながら


「ごめん…今のナシ。忘れて??」


そう言おうと口を小さく動かした、その時。


「今からそっちに行きます。」

「へっ?!」

「先生、今お家ですよね?今から行きます。」


真彩は驚くほど冷静な声をして、突然こんなことを言い始めた。



「何言ってんの。もう遅いし…いいよ。」


好きな女と同じ空間にいて、しかも密室。そんな状況の中で何もしない保証なんて俺にはできない。


来てくれたら心強いけれど。嬉しくて泣きたくなるけど


「大丈夫だよ。真彩。
そう言ってくれるだけで充分。」

「でも…!!」

「こんな時間に外をウロついてたら、キラに疑われるだろ?あいつは俺と真彩に接点があることすら知らないんだ。変なことはしない方がいい。」


俺は真彩の提案を丁重にお断りした。



きっと俺は年甲斐もなく、真彩に惚れてる。8つも年下の彼女にあり得ないほど惹かれてる。



だけど……さ?
俺はキラのことも好きなんだ。



驚くほど繊細で、触れただけで壊れてしまいそうな、危うい精神を持ったキラ。

キラキラのダイヤモンドみたいな才能を隠し持ったキラ。

犬っころみたいに俺に懐いて『月原!月原!』そう言って、俺に笑いかけるあいつを俺は心底可愛いと思う。