あの日、あの夜、プールサイドで



親父の亡骸の入った小さな骨壷を持って帰って、親父の遺影の側にその壺をチョコンと置く。


真夏の太陽のように明るい笑顔をふりまく親父の遺影を見ながら


「今日から一人…か。」


そう呟いて親父の遺影の前に座ると、急に淋しくなってきた。



変だよな。
今までだって家と病院とで離れ離れで暮らしてたハズなのに…。明日病院に行ってもオヤジはいないんだと思うと寂しかった。



「和也」



柔らかな声で自分のことをそう呼んでくれる人はもうどこにもいないのだと思うと、切なくて胸が張り裂けそうなほど痛かった。



「親父……。」


口から言葉がこぼれ出して、まぶたの奥に熱いものがこみ上げてくるのを感じていた、ちょうどその時。


ポケットに入れていた携帯が軽やかに鳴り始める。あわてて取り出した携帯に出ていた名前は『向坂真彩』



深呼吸して


「はい、もしもし。」


電話に出ると


「先生…大丈夫ですか??」


耳の奥に柔らかな真彩の声が響き渡る。



その声にホッとして。ガラにもなく泣きそうになって


「ダメ。」

「え??」

「どうしよう、真彩…。
俺…一人になっちゃったよ……。」


俺はこんな弱音を吐いてしまった。