あの日、あの夜、プールサイドで



でも、こういう取引なら真彩は受けてくれるんじゃないか、と思った。


真彩は少し考え込んだ後

「でも…おにぎりとか唐揚げとか、簡単なモノしか作れないよ??」

申し訳なさそうに、俺を見る。



「なーに言ってんの。
いいじゃん、おにぎりに唐揚げ!食いてーー!!」


ケラケラ笑いながら、真彩の頭をポンポンすると


「中身は何でもいいんだよ。」

「え??」

「簡単でも何でもいいよ。向坂さんが作ってくれた、ってことが大事なんだからさ??」

「先生…。」


俺はニッコリと真彩に微笑みかけると、その視線を中庭に戻す。


太陽の光を浴びてキラキラ光る木々を見ながら


「一緒に行こうぜ、ネズミーランド。今週日曜日、10時頃に愛児園に迎えに行くからな。」


俺は一方的に、そう告げた。



訪れる、沈黙。
キャハキャハとはしゃぐ子どもたちの声の中で、俺たち二人は目も合わせず、ただ前を向いたまま何かを考え込んで黙りこくっている。


YESと言って欲しい俺に、悩む真彩。



真彩はしばらく考え込んだ後、突然

「先生、おかずは何が好き??」

こんなことを尋ね始めた。



「え??」


呆気に取られた俺が返答に困っていると


「せっかくだから、お弁当には先生の好きな食べ物いっぱい入れたいな、って思って。」

「……っ!!」

「私、夢の国に行ったことないから、本当に楽しみです。」


そう言って。
柔らかに、涼やかに、彼女は笑ってくれた。